肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)に対してのキネシオテーピングの有効性について(2-5)

生 年 月 日 昭和49年4月12日生
開業年月日 平成19年7月3日
開 業 場 所 滝川市新町5丁目17-17
卒業年月日 平成8年3月卒
出 身 校 北海道柔道整復専門学校

三宅 一平
(滝川ブロック)

<<はじめに>>

整骨院において肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)は日常の臨床において、しばしば遭遇する症例の一つである。特別な原因が認めにくく、肩関節を中心とした痛みがあり、肩関節の運動制限ことに上腕の外転外旋が侵される。

 

本態は肩峰下包に原因があるもの、上腕二頭筋長頭腱腱鞘が原因のもの、肩腱板に原因があるもの、関節包の炎症が原因とする説が考えられているが、多くの手術例を基盤として、肩腱板の原因が現在妥当のようである。今回、当院で実際に行っているキネシオテーピングを用いた治療について報告する。

<<治療法>>

当院での治療(ホットパック、アイシング、電療、柔整マッサージ、ストレッチ運動指導など)後、疼痛があり関節可動域制限の変化があまりみられないものに関して、キネシオテーピングを行い、施術前後関節可動域の変化と症状の変化をみた。肩関節周囲炎の症状の程度を把握(軽度・中度・重度)し、キネシオテープを行った。

○軽度:いつも肩が重い、だるい、肩を使うと痛みが残る。

○中度:腕が痛くて上がらない(屈伸、内外転の制限)、無理に動かすと非常に痛い。

○重度:少しでも動くと痛い、夜間痛、体位の変換も困難。

<<症 例 ①>>

63歳 女性 主婦

日頃から孫の子守りをすることが多い。趣味は登山とスキー。体を動かす機会は多い。

主 訴 右肩関節部痛。背部痛、夜間痛あり。徐々に腕が上がらなくなりほっておいたら治るだろうと思っていたが、次第に日常生活が困難となり整形外科受診し『肩関節周囲炎』と診断。病院が遠方なので、なかなか通院出来ない為来院する。
初険時
所 見
他動的ROM 外転35°屈曲60°伸展30°
処 置 治療開始6/7温罨法、電療、肩関節肩甲骨部ストレッチ、棒体操指導、キネシオテーピング(中度)、運動後冷罨法を行った。その後、週2回の頻度で来院。6/21外転65°屈曲90°伸展35°夜間痛あり。キネシオテーピング(重度)にて施行。温罨法、ストレッチ中止。6/30外転70°屈曲100°肩甲骨部に筋緊張あり。キネシオテーピング(中度)、夜間痛軽減したので訓練再開。7/6外転80°屈曲120°伸展45°上腕部に筋緊張疼痛あり。7/21屈曲140°夜間痛ほとんどなし。8/12屈曲155°に改善。キネシオテーピング中度から軽度に変更。9/7屈曲160°外転120°筋力訓練指導。10/21ADL支障ない為、本人希望で施術終了。

<<症 例 ②>>

74歳 男性 自営業(塗装業)

たまに自営の仕事を手伝う。趣味はゴルフ。

主 訴 右肩部運動痛。以前より肩周辺に違和感あり。ゴルフの練習中スイングした際クラブで地面を強打した。
その後も運動痛が治らず来院する。
既往歴 H2年頸部腫瘍摘出術、術後も頸〜左上肢に鈍痛しびれ感あり。
初険時
所 見
他動ROM 外転90°屈曲110°伸展45°、Painful arc sign(-)、Drop arm sign(-)、
処 置 治療開始12/1温罨法、電療、柔整マッサージ、肩関節ストレッチ、筋力訓練指導、キネシオテーピング(軽度)を行った。その後、週3回の頻度で来院。12/6外転100°屈曲130°伸展55°12/20除雪をした為筋肉痛により疼痛増強。筋力訓練中止。キネシオテーピング(中度)1/14外転130°屈曲150°キネシオテーピング(軽度)、筋力訓練再開。1/26屈曲165°に改善。筋力訓練追加指導2/12ゴルフの練習再開2/28運動痛、違和感ほぼ消失。本人希望で施術終了する。

急性期で痛みが強く、不眠を来たすほどの時は、ホットパック・ストレッチ運動は中止、アイシング、電療、消炎鎮痛剤塗布、冷湿布のみを行う。安静保持、就寝の際は患側を上に側臥位とし、腋窩に小さな枕を入れ、上肢と体幹を離すと疼痛が軽減する。

<<結 果>>

各症例ともキネシオテーピングの実施により可動域が平均0〜20°増加し通常よりも患者様に負担をかけずに治療することが出来た。長時間テープを貼っていると、かぶれが出てしまう事もあった。

<<考 察>>

キネシオテーピングの効果として
① 筋肉の機能を正しく戻す
② 血液・リンパ液の循環を良くする
③ 痛みを抑える
④ 関節のズレを正す
など肩関節周囲炎の治療の際にも有効なものと推測できる。

 

肩関節周囲炎は一般的に肩腱板の老化現象が原因であるとされている。テープを貼り運動させることで、過度の筋緊張を抑え、血液循環の改善や関節可動を円滑に行えたものと推測する。肩関節周囲炎治療の根本原則は、初期の関節拘縮進行期治療することである。肩甲上腕関節が完全に硬着して、肩関節運動が肩甲、胸郭のみにおいてなされているという、いわゆる凍結肩になる前に治してしまうことである。

 

運動療法は理学療法の主役であるが、その根本原則は痛みのない範囲に、しかもすべての方向に可能な限り運動を行わせ、患者様に恐怖を与えないようにすべきで、患者様自身で行う運動療法が他人によって行われる他動運動より、はるかに有効である。症状に応じて棒体操、コッドマン体操、滑車など、種々の器具を利用する運動も有効である。

<<まとめ>>

今回は肩関節周囲炎について述べたが、キネシオテーピングの有効性があると実感した。今後は他の症例に対しての治療も積極的に取り入れていきたいと思う。

<<参考文献>>

  1. 《身体運動の機能解剖》
    監修 栗山 節郎 翻訳 中村 千秋 土屋 真希
    医道の日本社
  2. 《関節可動障害 その評価と理学療法・作業療法》
    編者 嶋田 智明  金子 翼 メディカルプレス
  3. 《決定版 キネシオテーピング》
    著者 加瀬 建造 編者 キネシオテーピング協会