体幹トレーニングとリハビリテーション(2-7)

生 年 月 日 昭和44年11月16日生
開業年月日 平成4年7月11日
開 業 場 所 勇払郡占冠村字中央
卒業年月日 平成3年3月卒
出 身 校 北海道柔道整復専門学校

増子 尊士
(旭川ブロック)

<<はじめに>>

身体におけるケガは、受傷後早期に適切なリハビリを始められれば、これに勝るものはないとされている。 これに基づき、足関節捻挫に対し、即動かせる事の出来る体幹トレーニングのリハビリを導入し、その後の早期の社会生活、スポーツへの復帰の経過を観察してみた。

<<方 法>>

足関節捻挫に対し、局所のエクササイズとして、タオルギャザー、ストレッチボード、つま先立ち(カーフレイズ)。体幹のエクササイズとして、2プローン、クリスクロス、Vバランス、スイミングを導入した。
また、体幹トレーニングに際し注意して行ったことは、

  • 呼吸法を覚える
  • 正しいフォームを身につけること
  • オーバートレーニングを避けること
    (中学生は特に注意しました)
  • 徐々に量を増やすこと

<<症 例1>>

中学2年女子Aさん
ソフトテニスの練習中右足関節捻転受傷、少し休んだら痛みが引き練習を再開、2日後動くうちに痛みが強くなり来院。
軽度の右足関節捻挫だが、3週後に試合。
目安の治療とリハビリのプログラムを作成、バランス感覚が悪かったので体幹(平衡性)トレーニングを治療と並行し指導。

初日、2日目 冷罨法 テーピング固定。
3日目以降 温罨法 電気療法 手技療法
体幹(バランス)トレーニング開始2プローン
・2プローン(膝をついて)

・クリスクロス

・スイミング
・Vバランス

5日目 治療後、腫脹軽減。 テーピングをしてタオルギャザー5セット。

つま先立ち10回3セット ストレッチボード20度3分
体幹トレーニング・2プローン左右8回、クリスクロス4セット。

10日目 治療後、疼痛軽減。テーピングをしてタオルギャザー8回
つま先立ち10回5セット、ストレッチチボード25度3分

体幹トレーニング 少し回数を増やし指導。

13日目 治療後、疼痛さらに軽減。トレーニングとリハビリを行いテーピングをし、軽いジョギング開始。
14日目 腫脹・疼痛消失し治療後、テーピングをし、トレーニング後のアイシング指導、徐々に部活のメニューをこなす。
19日目 試合前日治療後、テーピング固定をして試合。
21日目 試合後来院、試合中痛み無し。
治療後、予防の簡単なテーピングを教え治療終了。

<<症 例2>>

32歳男性Kさん
フットサル大会中ジャンプをし、着地した際、足関節捻転負傷。
受傷後も運動を続け、その後飲酒中、腫れと痛みがあり翌日来院。

初検時、 冷罨法をしてテーピング固定。
3日間は安静・アイシング・入浴不可を指導。
4日目 治療をし、テーピング施す。2プローン左右3回ずつクリスクロス、スイミング、Vバランス1回ずつ行い、メニュープリントを渡し自宅での運動指導。
以後、治療後、体幹運動2プローン左右5回ずつクリスクロス5セット、タオルギャザー5回、ストレッチボード20度、3分間。腫脹・疼痛軽減テーピングをしてつま先立ち10回3セット、タオルギャザー5回、ストレッチボード23度3分、2プローン左右10回ずつ、スイミング、Vバランス行いアイシング。
18日目 治療後、ジョギングを指導。
25日目 疼痛消失、治療後体幹トレーニング。
スポーツ時に簡単な伸縮性テープでのテーピング指導。

<<症 例3>>

45歳主婦Mさん
ミニバレー中、足関節捻転し自宅にてアイシング。
疼痛あるも腫脹軽度、軽度の捻挫。
この方はあまりきついリハビリは望んでなく、バランスボールエクササイズを勧めた。
治療とバランスボールを1週間続け。
10日目疼痛軽減。1日おきに来院し治療。
28日目疼痛消失し治療終了、バランスボールは続けるよう指導。

<<結 果>>

3症例共に軽度の足関節捻挫ではあるが、4週間以内に日常生活、スポーツ活動時の疼痛が消失し、復帰出来た。

<<考 察>>

今回の足関節捻挫に対し、体幹トレーニングを導入することで、バランス感覚が向上し、四肢に対し安定性を高め、足関節の負担を軽減すると感じた。

<<結 論>>

  1. 捻挫に対し、早期のリハビリは、社会生活、スポーツ活動への復帰を短縮する事が可能。
  2. 体幹のトレーニングは、身体の安定性を高め、四肢への負担を軽減させ、特に体重移動を円滑にさせる。
  3. 日常生活の中では、手に物を持つ場面が多く、体幹が弱いとその分バランスを崩し、下肢に負担をかける。

<<総 括>>

3症例に共通するのは、スポーツシーンに早期に復帰したいという事であり、患者自身が復帰に向け努力したと言う事が、早期回復に繋がったと感じた。誰かに治してもらうと言う感覚ではなく、共同作業的な感覚が早期の回復には必要と感じた。

<<参考文献>>

  1. スポーツに効く! 体幹トレーニング
    本橋 恵美 著  スキージャーナル株式会社
  2. 実践スポーツクリニック スポーツ外傷・障害とリハビリテーション
    福林 徹   文光堂
  3. [予防]→[対策]がイラストでわかる スポーツ外傷・障害とリハビリテーション
    魚住 廣信 著  山海堂