当院における腰部捻挫患者の統計学的考察(3-2)

生 年 月 日 昭和44年12月1日生
開業年月日 平成18年4月12日
開 業 場 所 余市町大川町5丁目35番地
卒業年月日 平成3年3月卒
出 身 校 北海道柔道整復専門学校
 
飯坂 孝典
(小樽ブロック)

<<はじめに>>

 急性腰痛症は、我々柔道整復師が日常よく遭遇する疾患であるが、細分化した報告が少なく不透明な部分が多い。今回は、当院における傾向を統計とともに比較検討を行った。

<<対象と方法>>

 2009年1月〜2010年12月までの2年間に受傷後3日以内に来院した177例、男性66例、女性111例を対象とし、平均年齢男性50歳、女性49.2歳であった。方法は、男女別、年齢別、Th12〜L3関節までを上部腰椎(以下、上位型)としL3〜S1までを下部腰椎(以下、下位型)とし、それぞれ左右に分類し比較した。統計方法は、マン・ホイットニ検定、一元配置分散分析、クラスカル・ワーリス検定、多重比較検定を行った。

<<結 果>>

左右差は男性左側29例、右側34例、両側3例であり、35歳〜49歳群と50歳〜64歳群では左側より右側が多かった。

女性左側50例、右側58例、両側3例であり77歳以下では全例で右側が左側よりも多かった。

年代別では49歳まで発生数が多く、35歳〜49歳群と50歳〜64歳群の間で5%で有意差を認めた。このことは、カパンジィらの報告による腰椎の前後屈角度が50歳ころから急激に減少する事と一致する。

障害部位では、男性、女性ともに特に右下部が多かった。

男性の年代別障害部位では年代ごとに発生場所にばらつきが認められたが、

女性では下部腰椎に発生が多く特に35歳〜49歳の間で顕著であった。

また、通院期間、通院回数では男性は年齢と通院期間に相関を認めず、年齢が上がっても治療に時間を要するとは限らなかったが、

女性では年齢を追うごとに漸増する傾向にあり通院期間では65〜77歳群が35〜49歳群の約1.5倍の日数を要した。通院記録では、男性女性とも下位型で多く、男性ではどの群においても有意差は認めなかったが、

35歳〜49歳群が通院回数が多く、通院期間も上位型が平均3日程度に対して下位型は10日程度と3倍強を要した。女性では34歳以下、35歳〜49歳群、50歳〜64歳群と65歳〜77歳の群で通院回数、通院期間ともに1%で有意差を認めた。

<<考 察>>

男性、女性ともに右側に多く男性では35〜64歳の壮年期に多いのは年齢ごとの脊柱周囲の組織における変化を鑑みず同じような労働を行ってしまうことによるもの等考えられ、女性が比較的若年に多いのは育児等も関係していると思われた。

 

障害部位では下位型の発生数が上位型の2倍となったが、上位腰椎よりも下位腰椎の可動性が大きいものが加齢的変化に対応出来ないことも考えられた。通院期間では平均30日以内であり、それ以上の症例では他の疾患を潜在的に抱えている可能性がある。

<<まとめ>>

男性、女性とも下位型が多かった。年代別発生数では、35〜49歳群と50歳〜64歳群で有意差を認めた。男性は、通院期間、通院回数ともに有意差を認めなかったが、女性では65歳〜77歳群と他群で有意差を認めた。

<<参考文献>>

  1. A.I.KAPANDJI:関節の生理学 医歯薬出版株式会社
  2. 整形外科リハビリテーション学会:運動療法ナビゲーション MEDICAL VIEW
  3. 柳井 久江:4STEPS エクセル統計 オーエムエス出版
  4. 並木 昭義他:コメディカルのための統計学入門 日本放射線技師会出版会