足関節捻挫の簡易固定方法(3-5)

生 年 月 日 昭和27年6月17日生
開業年月日 昭和57年7月5日
開 業 場 所 登別市新生町1丁目18番12
卒業年月日 昭和54年3月卒
出 身 校 東北柔道専門学校
 
佐々木 清勝
(日胆ブロック)

<<はじめに>>

 足関節の捻挫は、関節に作用した力の方向や大きさによって変わり、日常生活やスポーツ等において外反外傷よりも内反外傷の方が多く発生する。
 
 足関節部に関節可動域以上の強い外力が加わり外反、内反が強制され外側靭帯、内側靭帯軟部組織等が損傷し歩行困難になる程の激痛を伴い、軟部組織は腫脹し受傷初期より皮下出血が認められ関節可動域は制限される。
 
 キャストライトを用いた簡易固定法により良い結果が得られたのでここに報告する。

〔内反捻挫〕
多発する足関節捻挫で、外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が伸展した状態で内反が強制された際に発生する。
重度捻挫では、靭帯断裂や骨折等を伴う事が多く、レントゲン検査等で骨折の有無を確認する必要がある。
検査を怠り骨折を見落とした場合、予後に重大な問題が出てくる。
つまり骨折特有の腫脹や疼痛が捻挫にしては長期間通院施療しても改善されない等の弊害が出てくる。
〔外反捻挫〕
三角靭帯(脛舟部、前距脛部、脛踵部、後距脛部)が非常に強く断裂しにくい為、骨損傷が起きる事が多く脛骨下部付着部に剥離骨折等が起こる場合がある。

<<シーネ作製>>

シーネ製作 Ⅰ

シーネ製作 Ⅱ

 座位の肢位にて膝を90度屈曲し、下巻きにオルテックスを使用し、膝関節両横下部まで2回位折り返し巻く。下巻の両端部をサージカルテープ等で留める事により、ずれてこないので良い。
 
 足関節を約90度の肢位に保持し、固定材料としてキャストライトを用いて腓骨側上部より足底部を通し、脛骨側上部までを固定出来る様に施し、上端部を手で押さえ固定材料が硬化する前にシーネの上より包帯で全部巻き硬化した頃に上に巻いた包帯を外す。
 
 注意点として材料が軟らかいので患部に付け両手でシーネに形成しようとしても面が凸凹になり思う様に作製出来ない。 
 材料が軟らかい間に敏速に患部と密着する様に包帯で覆って両手で形を整え作製すると良い結果が得られる。
 
 材料が硬化しシーネ作製完了後に一旦患部より外し、ギプスカッター等で角を取り直接皮膚に当たらない様に下巻きに注意し、シーネを再装着後、膝部下部より足関節までの間を弾力包帯では無く、綿包帯で巻き動揺しない様に固定する。

<<利 点>>

 シーネ装着後、外反、内反が制限され下腿部全体で荷重を受ける事により、足関節部に無理な力が加わらなくなり受傷時より疼痛が軽減する。          装着後、スニーカー等の靴が履けて自力歩行が出来る様になる。
 次回の施術の際に着脱が簡単に出来、完全ギプス固定よりも患部の施術、リハビリ等が容易である。

<<症 例>>

1.36歳女性
 バレーボールの試合中ジャンプした際、転倒し左足に激痛が有り、急激に腫脹し強い痛みで歩行困難となり来院。
 初検時には腫脹、発赤、局所圧痛が有り歩行痛が著しく骨折を疑い、近所の医院にレントゲン撮影を2方向依頼し、骨に異常が無い事を確認した上で、左足関節捻挫と判断した。
 患部を冷却等の処置後シーネを用いて固定、完全硬化するのを待ち、その後、自力歩行にて帰宅。
 3日目より腫脹、疼痛が軽減しはじめ、2週間固定後シーネ除去し2週間の後療法にて、4週間で症状消失し治癒する。

 

2.68歳女性
 夫婦で羊蹄山へ登山中、急な下り坂で滑り転倒した際、右足が受傷直後より腫脹し激痛が有り、自力歩行が困難になり、携帯電話で119番に助けを求め、ヘリコプターにて総合病院に救急搬送され、レントゲン検査上では骨折は無く、右足関節捻挫と診断され後日来院。
 簡易シーネ装着し、2週間固定後除去し、2週間の後療法にて4週間で症状消失し治癒する。

<<まとめ>>

  1. 歩行時、全体重負荷にも丈夫で破損しにくい。
  2. 包帯固定により着脱が簡単で患部が良く観察出来る。
    シーネ固定を施す事により、足関節の運動が制限され、動揺しなくなり、靭帯や筋腱群軟部組織等の回復が早くなると考えられる。