偏平足(アーチの形成不全)に対する一考察(3-6)

生 年 月 日 昭和40年11月18日生
開業年月日 平成5年4月
開 業 場 所 札幌市白石区川北1条2丁目10-14
卒業年月日 平成元年3月卒
出 身 校 北海道柔道整復専門学校
 
奥山  清
(札幌ブロック)

<<はじめに>>

 人間は進化の過程で二足歩行をするようになり、そのため足底部への体重の掛かり方によっては、足部のみならず、さまざまな身体各部位に疼痛・障害をきたしやすくなっていると思われる。
 
 また、足部アライメントも静的状態(非歩行状態)と動的状態(歩行状態)では評価も異なり、障害の発生の過程も変わってくると思う。
 
 今回は偏平足と言われている、いわゆるアーチの形成不全により生ずる各部の障害、そしてアーチの形成アプローチを試みた結果を報告する。

 全体的に偏平足の症状として、歩行時に足部アライメントに掛かる体重は内側後方(かかと方向)に偏り、外転を呈しやすくなっている事に加え、足部アライメントと足趾屈筋群の筋力が低下する傾向がある事が知られている。

 また偏平足の形態としては距骨と踵骨の角度が鋭角になるほど症状が悪化する為、角度を広げ、内側のアーチを形成する事で、偏平足の症状の改善が可能と判断し、アーチを形成する為の治療を行い、平行して足部アライメントと足趾屈筋群の筋力増強を図る事が症状の緩和の為に有効だと思う。

<<方 法>>

1.足底筋と足趾屈筋群のストレッチ
壁を支えにしての第一中足骨の底屈と足趾骨の背屈の維持

2.足底部アーチの徒手矯正
踵を押さえながらアキレス腱を伸ばし、そのまま第一中足骨の底屈と第一足趾骨の背屈を行う

3.足底筋と足趾屈筋群の筋力増強運動…つま先立ち歩行の指導・

スクワット・タオルギャザー

4.普段使用している靴の足底部にアーチパッドを挿入
使用材料  ソルボ2軸アーチパッド
      ソルボRウェッジパッド5mm
      ソルボRウェッジパッド3mm

5.4.と同様の材料を用い、患者の足の形に合わせてプライトンで内側アーチパッドを作成し患者の靴下の中に挿入する。

<<症 例 1>>

14歳 男性 身長172㎝ 体重57㎏ 足のサイズ26.5㎝  左右の下腿周径(膝下10㎝)34.5㎝
柔道中、前足部(つま先)に体重が掛かり足底部筋膜炎を発症した。
起立時に足底部の偏平足(アーチ形成不全)があり、足底部の足趾屈筋群の伸張の低下がみられた。

<<症 例 2>>

13歳 男性 身長154㎝ 体重55㎏ 足のサイズ 25㎝
歩行中、段差につまずき、足部を捻転し、負傷した。
足関節内果部(三角靭帯)の圧痛(+)・腫脹(-)徒手的外転の疼痛・歩行痛
足底部は偏平足を呈していて起立時、軽い足部外転をとっていた。

<<結 果>>

足関節と足趾の動きを良くする為、足底筋と足趾屈筋群のストレッチ(爪先立ち歩行・スクワット・タオルギャザー)を行った事により、前足部足趾筋群の筋力強化をすることができた。

足底部の内側アーチパッド挿入に関しては、当初、足底部に違和感・軽い疼痛があったがパッドの調整を重ねた結果、少しずつ慣れ始め、足趾・前足部の動きが良くなり、歩行動作の改善も見られた。

しかし、足底部のアーチを形成するには徒手的、又は運動等には限界があり、内側アーチパッドを使用することで、体重の移動を制限することにより足関節と足趾の動きの改善が得られるが、この方法だと長期間にわたる全身的なバランスを監視する必要がある。

<<まとめ>>

 偏平足により歩行時、足底部の体重の重心は内側後方に掛かる為、アーチ部分の足底部の筋群の筋力、足趾部の動きの低下を招き、脚部のみならず全身的な障害の誘発をきたしやすく、また、アーチの形成不全により来院時と同様の傷病が繰りかえしやすく、形態的変形もおこりえるので、内側アーチを形成する事での足底部・足趾部の筋力も含めた動きの改善により、身体各部への障害の予防が見込まれる。

 

 しかし、アーチの形成と言っても簡単ではなく、今回の患者についても長期間の治療が必要であり、本人の疾患に対する理解も不可欠である為、これからの治療の計画など、はっきりとした目標を定め、協力を促すことが重要だと思われる。