骨粗鬆症における脆弱性骨折について

順天堂大学整形外科講師・福島整形外科病院院長・式場病院理事長

今日は「骨粗鬆症における脆弱性骨折について」お話しします。

先生方皆さんご存知のように、骨粗鬆症というのは老人病です。そこで、骨粗鬆症にならない為にはどうしたらいいのかというと、老人にならなければいいのです。しかし、これは絶対無理なことですよね!

今日お話しようと思っているのは骨粗鬆症における脆弱性骨折と、アンチエージングについてです。

エイジングというのは、齢を取るということですが、アンチエージングというのは齢を取らないということです。これは無理なことですので、どういう風にしたら老化を遅らせることが出来るのかというお話をちょっとさせて頂きます。

骨粗鬆症というのは、体内のカルシウムが不足して骨に鬆(す)が入り、もろくなるっていうのが定義になっています。しかし、最近は骨粗鬆症、骨量が少なくなるだけじゃなくて脆弱性骨折を起こす原因の一つに骨質があります。骨の質、骨量と骨の質が非常に問題になっています。ということで、骨質を上げるにはどうしたらいいのか?というようなことが最近いろいろ話題になっています。

骨粗鬆症の「鬆」という字は古くなったダイコンなどに入る「す」のことなんです。鬆の上半分は、髪とか髯のように一本一本バラバラであるという意味を成していて、「松(しょう)」というのも松ですね。

これもやはり、松葉という意味で、一本一本バラバラに間があいています。ですから、骨粗鬆症というと、骨が粗く鬆になっているという意味なんです。「鬆」の字は「す」あるいは「そう」と本当は読むのですが、下の松の字に引っ張られて、今じゃ「しょう」と言うふうに呼ばれます。

まあ、骨粗鬆症というと難しい病名で、病気自体、まだ、はっきりわからないです。ある程度はわかってきたのですが、なかなか難しい問題であるということで、中国では「骨質疎松症」と言いまして、松っていうのは、門松に使われることでおわかりのように長寿の象徴なんですね。

日本が世界一の長寿国になると共に、骨粗鬆症が、日本だけじゃなく世界でも長寿国家になっています。

特に、日本は少子高齢化が進んできて全体的に老人が多くなって、骨粗鬆症が増えるといことが最近問題になっています。骨粗鬆症が増えると、じゃあ骨が弱くなったらどうなるんだと。

命に差し支えがあるのかとかというと、そういうことでは無いんですが、骨が弱くなると、いわゆる脆弱性骨折ですね。普通の力では折れないような骨折が起こってしまう。そうすると、寝たきり老人になってしまうというようなことが多くなってきます。

骨粗鬆症っていうのは、どういうのかということですが、骨の代謝。

骨というのは20歳位まで成長して行くんです。

そのあと、「リモデリング」といって、骨が吸収されて骨が形成される。これが、何回も何回も繰り返して、一生のうちに、人間の骨は何回も何回も入れ替わるんですね。

子供のとき、赤ちゃんのとき骨が出来上がって、一生そのままということではなくて、骨が吸収されて、骨が形成されて、こういう回転、これを「リモデリング」っていうんです。

骨には、破骨細胞と骨芽細胞がありまして、破骨細胞で骨が吸収されて、そして、骨が無くなったということになると骨芽細胞が働いて骨ができるという回転になってくるんです。

女性ホルモン「エストロゲン」ですが、これが働くっていうことは破骨細胞に働いて、あんまり吸収してはいけませんよって命令を女性ホルモンがしているわけです。ですから、若い30代・40代・50代位までは、上手くこれが出来ているわけです。50代の後半、閉経期になりますと女性ホルモンが出なくなります。そうすると、ここで破骨細胞がここぞとばかりに働くわけですね。

そうしますと、どんどん骨が吸収されると、骨芽細胞で出来るのが間に合わなくなってきます。これが、いわゆる高回転型の骨粗鬆症、これが日本で一番多いわけです。

そういうことになってくると、骨が、いわゆる閉経を迎えると女性ホルモンの分泌が無くなると、骨の「リモデリング」の回転が速くなってしまう。

そして、その骨粗鬆症になってしまう。これが、健康な骨ですね。この骨粗鬆症の骨の中を見ていただくとわかるんですが、「鬆(す)」になってますよね。

縦にスウッと、ここに詰まっているのが骨。これは健康な骨だと、ぎっしり骨が詰まっているわけですけど、骨粗鬆症になると骨量が少なくなって、こういう風なかたちになって「す」みたいになってしまう。そして、こういう骨になってしまうと、骨の支柱なんかも弱くなりますので、それで圧迫骨折とか、そういうふうな形になってきます。

骨粗鬆症(脆弱骨折)

骨粗鬆症の種類としましては、原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症のこの2つになります。

普通、原発性骨粗鬆症というと、閉経後骨粗鬆症と高回転型骨粗鬆症(があります)。先ほど申し上げましたように、女性ホルモンが働かないために破骨細胞の吸収を抑制することができないために、破骨細胞の働きが強くなって骨芽細胞の形成が間に合わなくなってしまう。というようなことで、閉経後骨粗鬆症になる。

それから、もう一つ老人性骨粗鬆症、これは齢を取って80〜90歳位になりますと破骨細胞も骨芽細胞も均等に少なくなってしまうんですね。これは、低回転型骨粗鬆症と一般には言っていますけど、こういう言い方は、最近、しなくなりました。

それから、特発性骨粗鬆症。これは、妊娠後に一時的に骨粗鬆症になって、一年位経ちますと、カルシウムが元にもどって治るとこういうようなかたちがあります。

もっとも重要なのが、閉経後骨粗鬆症。女性ホルモンが少なくなると、いわゆる骨粗鬆症になる。

それから、続発性骨粗鬆症。これは、あの内分泌疾患ですね。特にクッシング症候群、そういうもので骨が弱くなってく。ステロイド剤の投与、寝たきり。これ廃用症候群で寝たきりになると、骨粗鬆症になる。関節リュウマチ、糖尿病、骨形成不全症というようなこういう病気に引き続いて、骨粗鬆症が起きる。大きく分けますと、原発性と続発性骨粗鬆症になります。

今、問題にしているのは、閉経後骨粗鬆症というのが非常に問題になっています。

では、「骨粗鬆症はどうしてなるんだろう?」というようなことなんですが、

カルシウムは、腸管から吸収されますが、そのときに、活性型のビタミンDがここで働くわけで、それが働いて吸収を良くし、そして、血液の中のカルシウムを増やす。それで骨芽細胞によって骨がどんどん出来てくる。それで、今度は骨芽細胞で骨が出来たとたんに、また、破骨細胞が働いて骨吸収が起こる。こういう回転になってできるわけです。

活性型ビタミンDって、非常に重要なんです。これがないと、いくらカルシウムを摂っても吸収できない。それから、活性型ビタミンDというのは、「アルファロール」とか「エディロール」とかいう薬が、今、でてるんですけど、そういう薬を一緒に飲む。

そして、このビタミンK。これが、一番問題なんですね。骨芽細胞に働くこのビタミンK。これが骨質を高めるということで、昔からビタミンKというのは納豆(が代表)ですね。こういうものを食べると、骨芽細胞が活性化する。

前の実験データなどを見ますと、(日本を)東北・東日本と関西の2つに分けると、関西の方が骨粗鬆症が多い。そして、骨折が多い。そして、東北の方が骨折が少ないというデータ(結果)があります。

これは、納豆を沢山食べるからそうなんじゃないというような…そういうデータもあります。

ビタミンKというのは非常に大切だということと。それから最近は、「テリパラチド製剤」っていう注射の薬が出ています。「テリボン」という商品名で出ています。一週間に一度注射したり、それから毎日注射する「ポリテオ」とか、そういう注射をすると、この骨芽細胞に働いて骨質を改善する。

それから、今、一般に病院で出している薬は、破骨細胞に働いて破骨細胞の働きを抑制する薬ですね。これが「エストロゲン」という女性ホルモンなんですが、これを前やっていたのですが、婦人科の先生がこれを随分使っていましたが、「エストロゲン」を使い過ぎると、乳がんになったり、子宮がんになったりという悪性腫瘍ができるっていうことなので、今、これは使いません。

いわゆる女性ホルモンと同じような成分の「イプリフラボン」。

これですね。これは、最近出てます。それで、閉経後骨粗鬆症にはこれを使うということで、こういう薬が出てきています。あと、大半が「ビスホスホネート」、今、一般に「ホサマック」とかですね「ボナロン」とか、そういう薬が全部、「ビスホスホネート製剤」(です)。

この薬の働きによって、破骨細胞の働きを弱くする。そうすれば、骨芽細胞が骨の出来るのに間に合わすことが出来るっていうことで作ったんです。けれど、これだけだと、どうも骨質が弱くなってしまう。ということで、この骨芽細胞に働く、そういう薬も、最近、出てきています。

では、「骨粗鬆症の原因は何だろう?」まあ、もちろん一番の問題は、この女性ホルモン、閉経後の骨粗鬆症(です)。

遺伝とか体質も多少ある。あと、糖尿病、薬の作用、これは「ステロイド」ホルモンなど作用ありますね。骨が弱くなってしまう。加齢、これが、もっとも重要だと思いますね。

それから、日光浴不足。日光浴をしないとどうゆうことになるかというと、身体の中に活性型ビタミンDが溜まらないですね。日光浴することによって、人間の皮膚の中に「アルデスティロール」という物質があり、それが日光に当たると活性型ビタミンDになる。

人間の身体というのは、ビタミンというのを生成することができないんですね。だから、ビタミンAにしてもBにしてもCにしてもビタミンEにしてもKにしても、これ多分、全部、飲み物・食べ物から摂らないとビタミンは出来ないんですが、ビタミンDだけは、人間の皮膚のところにある。「アルデスティロール」っていう物質に紫外線を当てると、これが活性型ビタミンDになる。だから、日光浴をしなさい。ということと、あと生活様式、これも非常に重要です。

運動不足になると、骨は力学的負荷が無いため、どんどん骨って弱くなっちゃいます。いわゆる寝たきりになると、骨がどんどんスカスカになって、いわゆる骨粗鬆症になる。

だから、宇宙飛行士が無重力状態の中で活動をしていて、帰ってくると、100%骨粗鬆症になっていますね。ですから、今は、そうことはかなり研究されていて、船内で運動をしたり、それから「ビスホスホネート」、いわゆる「ホサマック」なんかを打って防いでいます。

今は、宇宙飛行船から降りてきてもすぐに歩いていますけど。昔は、宇宙飛行船が降りてきても宇宙飛行士が降りたとこっていうのは報道してないですね。なぜかというと歩けない。だからみんな救急車で病院にとんで治療したということです。ですから、無重力の状態になると、骨はめちゃくちゃ弱くなる。

だから、ある程度、運動しなさい。それから、喫煙もよくない。あまり、アルコールを飲むのもよくない。もちろん、カルシウム不足、ビタミンDの不足、タンパク質の不足。タンパク質が不足すると骨の中の「コラーゲン」が無くなりますから、骨質が弱くなるということです。

骨粗鬆症って言うと、「最初どういう症状があるのか?」は、目に見えないですよね。

骨粗鬆。骨が弱くなったとか、「あなたは、骨がこれくらい弱くなりましたね」というのは見てもわからないので、まあ、「体が痛い」、「腰が痛い」、「歩き始めのときに体を動かすと痛い」、それから「背中がだるい、痛い」、「腰や骨の痛み」など、こういうことが最初に出てくるんですね。

そして、だんだん進行すると背中が丸くなって身長が縮んでしまう。もちろん、こういうギッちりした骨があれば大丈夫なんだけど、こういう骨粗鬆症みたいになると骨がつぶれてきて、こういう事になるんですね。

ただ、最初は骨がつぶれてくるときの痛み、こういう時に痛みが出てくるんですね。こういう時に、骨粗鬆症の予防すると良いということで、運動したり、ある程度日光浴させたり、それからカルシウムですね。カルシウムを多く摂れば、割合こういう正常値の骨に近づくんですね。

これは普通の人(左側婦人図)ですね。まず見た時に、真直ぐ前を見て頭と背中と踵がこうつけば、これは、正常であるということですね。

ところが、骨粗鬆症になると、こういう(右側婦人図)形になって、かかとをつけて、おしりを、胸をつけたりなにかすると頭がつかないとこういうことになってしまう。首の骨って言うのは、前弯で、胸椎になると後弯で、腰椎になると前弯が、こういう形になっていますね。

これが骨粗鬆症になると、非常に強くなるんですね。というのは、骨がつぶれてくるためにどうしても首が前に突き出して、後ろは、こう背中が丸くなって、腰がこう。よくお年寄りで、円背って言うんですけど、背中が曲がってしまう。若いときは伸長が152センチあったけど年をとってきたら145センチくらいになってしまったというのが、これですね。

これがレントゲンで見ますと、これが正常。で、Ⅰ度って言うと骨が、骨にちゃんと縦に線が入っている。

ところがⅡ度になると、これがすりガラス状になって、はっきりと縦の線が見えてくる。

ところどころ、こうつぶれかかってきている。

これがまったく骨粗鬆症になるとどうなるんだというと、骨が、魚椎・魚のような形になったり、楔形になったり、両方がつぶれてる形になってきて、こういう形になるということになると、さっき申し上げましたように、背中が丸くなって、それで背が縮んでいく。

いわゆる身長が縮んでくるわけですね。

骨が減少する過程、これが海綿骨質(左上図)で、これが正常、ほぼ正常なんですが。これがだんだん、骨が、いわゆる粗鬆化していく(左下図)。粗くなっちゃうんですね。

こういう縦の線が、いわゆるコラーゲンっていう形になるんですかね。

このいわゆるコラーゲンがだんだん少なくなって弱くなると、骨質も低下してしまうっていうことなんですね。

これは大腿骨(右上図)ですが、こういう風に骨皮質、これを輪切りにすると、骨皮質がこんなに厚いですよね。

それが骨粗鬆症になるとだんだんこう薄くなってしまう。(右下図)

では、骨はどれくらいあるんだろうということを見るのに、いわゆる、一般的というか、私どもの所にもあるのですが、DXA。こういうような方法で背骨と、これは、これの特徴はですね。背骨と腰椎や大腿骨など海綿骨質の骨量がわかるんですね。

これで。それから「MD法」といってこれはレントゲンで撮る方法ですが、これは、今はほとんどやってません。

それから超音波法、足の踵で超音波を当ててやる。これはスクリーニングですね。一般的に、骨粗鬆症の検診なんかでこれをやるんですね。

ところが、これは10%位の誤差があるんですね。+―10%位の誤差があるということで、このスクリーニングで引っ掛かった人が「DXA法」でやる。

それから「pQCT法」も一般的に整形外科のところでやっているんですね。

ま、こういう方法がありますが、やっぱり正確に測るには、「DXA法」が良いということです。

加齢とともに、骨がスカスカになる。これが、骨折しやすくなっているかもというようなことなんですね。

お年寄りがちょっと転んだだけで寝たきりになってしまったり、よく聞く話ですね。ですから、骨密度っていうのはやっぱり測っておいたほうが良い。骨の骨密度の検査っていうのは、いわゆる骨の一定の面積、あるいは体積、あるいはミネラルがどの位っていうのを測定することができるんですね。

20歳から40歳の若年成人と比較するとという、これが最も重要なところですが..。ヤング・アダルト・ミーン(Young Adult Mean)といって、若年成人の平均骨密度ってあるんですね。「YAM」と言うんですが。それを比較するとどうなんだいというようなことがでてくる。

じゃ、骨折をするということになると、どの位骨折する確率があるんだろう。

骨が弱くなったといっても、どれ位の確率なんだというのを評価する「FRAX」。

こういう器械ですね。これ器械と言っても計算機みたいになっています。これ、WHOが診療基準として提案しているわけなんですが、年齢、身長、体重、骨折歴など、ここに書いてある12項目を入力して、そうすると、今後10年間に予想される脆弱性骨折リスクが計算されると。

これはですね、なにもレントゲンとかそういうものを使用するわけじゃないですから、柔整の先生方にぜひやっていただきたいなと思うんです。これ、骨粗鬆症学会でも推奨していまして、通常の外来で、私もよくやっているんです。

たとえばですね、年齢が77歳でしたら77って入れて、性別、男性か女性か。で、体重、身長、既存骨折ですね。腰椎の圧迫骨折があったか、それともあの、コーレス骨折があったか、脆弱性骨折があったかどうかっていうことをこれで調べて、あるか、ないか。

そして、ご両親ですね、自分の。この方のご両親が大腿骨の頚部骨折があったかどうかってことを調べて、それから、タバコを吸うか、それから「糖質コラーゲン」、「糖質コルチコイド」、これ「ステロイド」ホルモンを飲んでいるか、飲んでないかっていうことですね。

だいたい関節リウマチ以外の方とか、それから、膠原病以外の方、これ飲んでいないと思うんですが。そして、「ステロイド」を飲んでいるか飲んでいないか。それから、関節リウマチがあるかどうか。それか続発性骨折、骨粗鬆症ですね。クッシング症候群とか、糖尿病とか、そういうのがあるかないか。それからアルコール摂取。これを全部調べるとこの方はこういうことになって、流れは、女性は、ずーっとこうきて、なし、なし、なし、なし、なしとこれを入れるんですね。

そうすると、主要骨折リスクは31%ですよって。だから過去、今後10年間に骨、脆弱骨折を起こすリスクは31%ありますよ。だから転倒には注意してくださいって。カルシウムを多く摂りましょう。こうしましょうという事が言える。

じゃあ、何%以下が正常なのかっていうことですね。これは、14%以下が正常です。だから14%以上の方は、脆弱性骨折を起こす確率がある。そして骨粗鬆症か骨粗鬆症予備軍ですね。骨粗鬆症になりやすいということ。この方、完璧な骨粗鬆症なんですが、14%以下だったらいいけど、14パーセント以上だったら、ちょっとそういう骨粗鬆症の予防をしましょうということなんですね。

これが、さっき言いました。あの、DXA、腰椎のところで、こう、平均が出ます。そうすると、若年性、若年成人の骨密度(YAM値)っていうのがここに出るんですが、これが正常だと80%以上です。

骨量減少が70〜80%、骨粗鬆症が79%、70%以下は骨粗鬆症ですね。そうするとこの方は、腰椎は54%で、ここに入るし、大腿骨頚部のところでも59%だから骨粗鬆症ですと言うことになりますね。

だからあの、この「FRAX」でですね、14%以下の方は、やっぱり、骨密度を測る必要があるっていうことですね。

普通骨折って言いますと、一時的にすごい力が衝撃が骨に働いて起こす。骨が折れるのが、一般的な骨折なんですね。ところが、このストレス骨折ですとか、脆弱性骨折、病的骨折っていうのはちょっとそういうのとは、そういう一般的な骨折とは違うんですね。

疲労骨折と言うのは、正常な骨に異常な力が繰り返し働くと起こってくる骨折ですね。

脆弱性骨折っていうのは、骨密度が低くなり、骨質が劣化した骨に正常な力が働いて起こる骨折です。

だから、一般的には折れるような力じゃないのに折れてしまう。と言うのは、骨質が劣化しているために起こったと。

病的骨折というのは、骨腫瘍に、骨の中に穴が開いたり、腫瘍ができますと正常な力でも加わると折れてしまう病的骨折です。だから、脆弱性骨折も一種の病的骨折の中に入るということですね。

骨質劣化っていうのは、骨には無機質と有機質というのがあって、無機質といえば石灰ですね。それから、有機質は「コラーゲン」で「コラーゲン」が劣化していくと、骨も弱くなるっていう事が最近わかったんですね。

これを鉄筋コンクリートで考えると、鉄筋はコラーゲンで、コンクリートは骨密度・骨塩量というものなんです。だから、いくらコンクリートはあっても鉄筋が弱かったら骨は折れるって言うのは当たり前の話です。

ですから、骨の中の「コラーゲン」っていうのも非常に重要な事になってきて、カルシウムばっかりじゃなくて、蛋白質も摂らないと骨の「コラーゲン」が少なくなって、骨が弱くなってしまい骨質劣化になってしまう。

「コラーゲン」は、老化とか、酸化ストレスですね。これで骨の「コラーゲン」が少なくなってしまいます。先ほど言いましたように、骨芽細胞に働くような薬を、あの骨芽細胞に刺激を加えてやれば「コラーゲン」が出来るってことがわかってきました。

ということで、いわゆるビタミンK、それから活性型ビタミンDですね。納豆とかですね。それからおもてに出てこう日光浴とかですね。それが骨芽細胞に働いて骨質を強化しますよ。それから骨芽細胞に直接働く、「テリパラチド製剤」ですね。「テリボン」とか「フォルテオ」。そういう薬を摂取すれば、いいってことがだんだんわかってきています。

骨の「コラーゲン」っていうのは、骨中の鉄筋と思えばいいんですね。骨の「コラーゲン」が劣化するってことは、骨の中の架橋でもある鉄筋が弱くなってしまう。鉄筋コンクリートの鉄筋の弱化に匹敵するということですね。

脆弱性骨折の起こるというのは骨密度が高くても、骨質が、いわゆる「コラーゲン」が少ないとですね、普通の人の1.5倍から2倍位骨折する確率があるんですね。ですから、鉄筋コンクリートの鉄筋が弱いと、鉄筋が酸化して錆びたり、劣化しちゃうと、その建物は弱いのと同じです。

骨の中で、いくら骨密度が多くても、いわゆる「コラーゲン」が少ないと折れてしまう。患者さんで「骨塩量」を測ると結構高い。けれども、大腿骨頚部骨折を起こしたり、腰椎なんかも骨折を起こす方が多いですね。というのは、骨質が下がっているからです。それから、もちろん骨密度が少なくて骨質が少ないと、これはもう、普通の人はまた大変で7倍から8倍くらい骨折するリスクがあるということです。

脆弱性骨折はどこに出やすいかというと、上腕骨外科頚骨折。それから、胸腰椎の胸椎の10番目から、だいたい、腰椎の3番目ぐらい。ここらへんが尻餅をつくと圧迫骨折を起こしやすいし、橈骨のコーレス骨折なんかもそうですね。手をつくと、折れてしまう。それから、夜起きてトイレに行こうと思って布団のハジにつまづいて転んで、大腿骨の頸部を折ってしまう。この4つが、だいたい、脆弱性骨折の基本になるわけですね。

レントゲンで一般に脆弱性骨折を見ますと、これが普通の正常の形の骨なんですが、これが潰れちゃってますね。

潰れて腰椎のいわゆる圧迫骨折を起こしています。こうなると、だんだん、背骨がこう丸くなってしまうんですね。

上腕骨の外科頚骨折なんですが、ここで骨が脆くなってきています。倒れて、手をついて、ここで折れてしまう。

これは、コーレス骨折。

これはもう相当ひどいですけども、手を背屈させて手をバーンとついて転んだらバリッと折れてしまった。

まあ、いい位置に治してくれた。「エフリスト」っていう釘でですね創外固定する。

 

それから、大腿骨頸部。大腿骨頸部というのは骨膜が無いんですね。

ここは、非常に弱いとこになってきて、形もこういう風になってますから、力学的にもここに非常に荷重がかかりやすいということになります。

そうすると、大腿骨頸部内側骨折。内側骨折・外側骨折とあるんですが、内側骨折というのは、関節包の中の骨折です。

関節包の外の骨折を外側骨折といいます。この内側骨折は、関節包の中で折れてしまった骨折というのは、昔からの通念で繋ながらないということになります。

なぜ、繋がらないかというと、血流が途絶える。ここに後骨間動脈という動脈がある。これは回旋動脈の枝ですから、それがこう行ってここに中央のところの大腿骨骨頭の3分の1以上の栄養を与えているところが、ここで切れちゃうために途絶えてしまう。だから、いくらこう骨を繋ごうとしてもだめなことで、最近は、こうすべて人工骨頭を入れてしまうということになってますね。

じゃあ、外側骨折、関節包の外の骨折というのは割合つきやすいから、こういう「ガンマネイル」ですね。こういう釘で留めてやる。

というようなことで、4つの脆弱性骨折のレントゲンを見ていただきましたけども、まあ、非常にこの高齢化に伴って、非常に骨粗鬆症の脆弱性骨折が多いです。

今、大腿骨頸部骨折は年間15万人以上、20万人近く発生していて、やっぱり骨折はほんと多いですね。その大腿骨頸部骨折、椎体圧迫骨折なんかで寝たきりになっちゃう。

その廃用症候群ですね。寝たきりになると、心肺機能が低下してしまう。

起立性低血圧とか、それで運動機能が低下してしまう。廃用症候群の原因となりますね、

だから、寝たきりになると、骨がまた弱くなってしまいますね。

さっき言ったように、力学的負荷をかけないために骨がどんどん弱くなってしまうので、大腿骨頸部骨折や椎体圧迫骨折になっても、なるべく早く復帰させてやるというのが必要であるということですね。

1番重要なことは、予防なんですね。

骨粗鬆症の予防は、どうしたらいいかというと、もちろん、食事からカルシウム多く摂って、タンパク質を摂って、そして運動、力学的負荷を骨に与えてやる。それから日光浴ですね。活性型ビタミンDをつくる。で、日常生活の注意。

こういうことも必要なんだということですね。まあ「食事」、「運動」、「日光浴」、この3つが、骨粗鬆症の予防と最近言われています。

これはちょっと古いデータですが、1日600mgカルシウムを摂りなさいというんです。今、1200mgぐらい摂らないと間に合わないということになっています。

それから、良質のたんぱく質を摂りなさい。

これは、良質のたんぱく質を摂って骨の「コラーゲン」を、いわゆる鉄筋を作りなさいということです。

それから、ビタミンDを十分摂ってカルシウムを吸収ですね。

活性型ビタミンDを、これが無いといくらカルシウムを摂っても吸収できないということで、ビタミンDを十分摂る。

リンは、そんなには摂り過ぎってことは無いでしょうけど、リンを摂り過ぎると、腸管からのカルシウム吸収が阻害されてしまうので、リンはあまり摂らない方がいい。

それから塩分。あまり摂り過ぎると、カルシウムを尿中に排泄してしまうんですね。ですから、塩分は控えた方がいいということが食事の注意になるわけです。

日本人の栄養素の平均摂取率を、こう見ますと、ビタミンB1、ビタミンA、それからビタミンB2、ビタミンCというのは、この線の100の上にいってますね。マグネシウムも近くまでいって、鉄もまあいい。鉄が少ないと「鉄欠乏性貧血」になったり、ビタミンAになると「壊血病」になったりということがあります。こういうことは、ほとんど今は大丈夫なんだけど、カルシウムが非常に少ないですね、日本人というのは。だから、最近よく言われているのが、カルシウムをよく摂るようにしましょうということですね。

じゃあ、どのくらいカルシウムは吸収できるのか。まあ、この30歳から40歳。これはボーンピーク。これは、ここが若年成人の平均骨密度が1番高い大切なところ(時期)なので、ここではたくさんカルシウムを摂りましょうということですね。

30%から40%。で、10代も必要、それから20代30代では、だいたい600mgぐらい摂りなさい。40歳50歳だとだいたい1日900mg以上摂りなさい。60代になると、口から入れても10%ぐらいしかカルシウムは吸収できない。だから、「よく牛乳飲みなさい」ってよく言いますよね。

ところが、牛乳はカルシウムが非常に多いんですけど、10%ぐらいしか吸収できないということになる。じゃあ、1800mgぐらい摂るということになるとどうなるのかというと、今日ですね、あの先生方に、「ユニカルカルシウム」っていうカルシウムを作っている会社なんですけど、「カルシウム製剤」というのは、昔は体の中に吸収できないというのが原則だったんですね。ですから、病院なんかでカルシウム剤って言っても、ほとんどくれない、くれないって言うかカルシウム出してもらっても吸収できないんです。

ということで、カルシウムが吸収できないってことが常識になっていたんですが、その「ユニカルカルシウム」というのは、カルシウムを非常に吸収しやすいようにしたんですね。で、世界7か国で特許取って販売してますけども、今日持ってきましたので、ぜひ、非常に体に吸収いいカルシウムだというんで、是非、帰りにお持ちになっていただきたいと思います。それを飲むというようなことですね。

まあ、ビタミンが欠乏するとどうなるんだということが書いてありますけれども、カルシウムを多く摂るためには、毎日ですね小魚食べたり、大豆を食べたり、こういうものをたくさん摂りなさい。それで、活性型ビタミンDもそういうの中に入ってますから、必要な分食べるといいですよとこういう形です。

それから、運動ですね。運動は非常にいい。

なぜかというと、その骨に力学的負荷をかけるために、骨量が増加する。そして、運動することによって筋肉が増える。筋肉が増えるということは、基礎代謝が増えるわけです。

ですから、転倒防止になったり、反射神経があの良くなったりで、骨折の予防にいいということになりますね。まあ、無理してあの運動するんじゃなくて、年齢に相応しいあの運動したらいいんでしょうね。

先程言いましたように、日光浴は、運動とともに骨を丈夫にします。日光の中に、人間の皮膚の中に「コレステロール」。いわゆる「アルデステロール」という、あのビタミンDに変える物質がありますので、それに紫外線があたると活性型になります。だから、運動はしましょうということです。

で、脆弱性骨折を起こさないために、どうしたらいいかということなんですけど。

これは転倒しないように注意をする。それから、こういうコードなんかで引っかかったりなんかするんですけど、注意する。それから、こういう階段を滑りにくくする。それで足元は明るくする。これは人感センサーなんかつけて、暗いとこ階段下りると危ないので、外出するときは気をつけなさい。浴室には手すりをつけましょう。まあ、こういうところで骨折しやすいということで、そういうところを注意しましょうということです。

老化とは

次にですね、いわゆる老化。

これは、骨粗鬆症とは直接は関係ないんですが、骨粗鬆症というのは老人病ですから、骨が老化すると骨粗鬆症になるというようなことですね。

老化っていうのは、どういうのかっていうのを、ちょっと、私はアンチエイジングっていうのを非常に興味ありまして、勉強してるんで、お話させていただきます。

人間の体の中に必要以上に活性酸素が発生すると、体が酸化していく。だから、鉄なんかが酸化すると腐っちゃうんで、劣化すると、同じように人間の体も酸化していくっていうことですね。

酸化すると、だんだん老化してしまう。

老化によって引き起こされる運動器の変化としては、骨。いわゆる「リモデリング」は衰えてしまって、骨粗鬆症になる。

で、関節軟骨の変化があって、変形性関節症になる。それから筋肉が低下してしまう。そうすると、転倒しやすくなる。それから、動脈の血管が詰まって、動脈硬化なんかを起こしやすい。

神経は、比較的変化が少ないですね。伝導速度は少し遅くなるけれども、神経は大丈夫。

老化に運動器の変化と、それから行動ですね。行動は、運動とか歩行。こういうところに、老化による一時的な変化が出てくるわけです。

老化現象は、「普遍性」、「内在性」、「進行性」、「有害性」ってよく言います。

「普遍性」ってどういうのかというと、あらゆる生物は年を取る。どんな生物でも、老化はするということです。

「内在性」というのは、どんな動物でも寿命というのがあって、これは種によって決まるわけですね。だから、人間と犬との寿命とが違うのと同じように、種によって生命というのが老化っていうのが決められているということですね。

また、もっと小さくなると、人間の中でも、その人によっては、「年取ってる人と若い人がいる」というようなことがよく言われますね。「あの人50代なんだけど60、70代のようなことになって老化してる」。ところが。80〜90になっても若々しい。「まさか80ってことは無いでしょう70ぐらいにしか見えない」というように、人によって、種にいろいろ老化の進行が違うということですね。

「進行性」というのは、老化は逆戻りしません。必ず年取っている。30代になった人が20代になるということはありえないです。進行している。

それから、「有害性」であるということです。年取ってくると老人病、糖尿病とかそういうものが起こってくる有害性。このあいだ、老化現象であって、老人の特徴として「予備力」「適応力の低下」、それから「身体・精神機能の低下」、こういうことが起こってきてしまうということですね。

100歳過ぎても元気に若々しく過ごしている人がいる一方で、先ほども言いましたけど、60代・70代で介護が必要な人がいる。と言うことは、老化のしかたや、老化へと向かう速度が、人によって違うということです。

老化していく、長寿という言葉がありますけども、人間の寿命というのは環境、いわゆる生活環境とそれと日常生活。それが、非常に60%ぐらいを占めているんですね。30%は、確かに遺伝なんですね。長生きする家系と良く言いますけど、確かに30%ぐらいあるんだけども、環境によっても大いに違ってくる。

100歳をすぎてもですね、痴呆や癌がなくて介護状態にならずに、健康的に暮らしている人々を調べると、血管とか筋肉とか骨とか神経、そういうものがバランスよく老化していくんですね。

加齢の弱点がほとんどないことが分かってきて、バランス良く老化していくということが、いわゆる、長寿に結び付くということです。

例えば、血管が硬くなっちゃうと、動脈硬化になり血管が詰まりやすくなり、脳梗塞になったりしてしまう。

骨量が減ってくると、骨折したりという脆弱性骨折が起こるということですね。

身体の一部の老化現象・老化度が著しく進んでいくと、その老化が進行した部分が弱点となり、そこから老化が加速して、要介護状態の原因になる傾向が多いということです。

例えば、骨が丈夫でも、血管が脆いという血管障害があると脳梗塞に陥ったりします。そうすると、全体的に今度は骨も段々脆くなってしまうということですね。

若年者と中高年者の身体能力の違いといいますと、呼吸・循環機能、いわゆる心肺機能ですね。

これは、あまり若者とも変わらない。ところが、筋力は著しく落ちる。それから、柔軟性ですね。

これも、年齢をとってきたとしても、あまり比較的変わらない。

それから、敏しょう性。これは、もう全く、衰えてしまう。だから、ちょっとしたところで、躓いて転んでしまったりするんですね。ここも、若者と違うところです。

それと平衡感覚。これも、年をとると、衰えてしまう。目を瞑って片脚立ちしてくださいと言っても、お年寄りはなかなかこれができないんですね。

ですから、いわゆる呼吸・循環機能、それから、柔軟性はあまり変わらないので、こういうところで運動をしていくといいかなと思います。

だから、筋力トレーニングとかウエイトトレーニングとかは、あまり重いものを持たせたりとかさせてはいけないので、必要以上にやらない方がいいでしょう。

ですから、呼吸・循環機能という持久力のある運動、いわゆるウォーキングとかですね。軽いジョギングとかが必要ということになります。

これは毎日運動している人と、全然行っていない人とでは、10歳ぐらいの差がでます。

例えば、45歳ぐらいの人で毎日運動している人と、30歳ぐらいの人で運動していない人は同じになっちゃうということです。これは、体力テストで調べてやってるわけですけども、女性もそうです。女性も毎日運動している人としていない人では、10歳ぐらいの開きがある。

これをずっと続けて行くと、運動していない人は、だんだん身体が衰えてきてしまう。いわゆる環境や日常生活によって、老化が進んでいってしまうということです。

歩き方の変化では、これが40代、70代、80代となるわけですね。

これで何が違うかというと、歩幅がまず違う。それから、手の振りも違う。それから、姿勢も違う。それで、だんだん年をとってくると、後ろに重心がかかってしまって、こういう歩き方になってしまう。

アンチエージング(老化を遅らせる)について

アンチエージングという言葉があります。

これは、年をとる(エージング)という意味。アンチエージングと言うと、直訳すると年をとらない。これは無理ですから、いわゆる老化を遅らせること。

先ほど言いましたように、運動していると10歳ぐらい若返るというのと同じように、じゃあ、どうしたらこの老化を遅らすことができるのか。

日本は、平均寿命というのが世界一。確かに、平均寿命っていうのが日本人はすごく高いですね。ただ、平均寿命というのは、寝たきりの老人でも、生きていれば平均寿命が長くなるわけです。

「健康寿命っていうのを延ばそう」。健康寿命というのはなにかというと、これは80歳〜90歳になってでも社会に参加して活躍しているということなんですね。それが、健康寿命ですね。

日整萩原会長がそうですね。高齢者になっても、積極的に社会に参加できる体を作るということが健康的な面でですね。

若さを保ち、活動的な日常生活を送ることができるようにする。こういうことになれば、医療費も安くなったり、医療の事で厚生労働省の「健保21」とか、そういうことで「健康寿命を延ばすイベント」をできればなということですね。

体の中で発生する活性酸素を、どのぐらい少なくするか。これが、いわゆる老化を防ぐことになるんですね。

活性酸素を無毒化する遺伝子として、「SOD(Superoxide dismutase)」というのがあるんですが、この遺伝子を持っている人は、活性酸素を無毒化にできる。

また、我々の体の中にあるホルモンで、老化を防ぐホルモンとして、一番重要なのは「インスリン」ですね。「インスリン」は筋肉を支え、血糖値を下げる。それから、「アディポネクチン」というのが、動脈硬化を防ぐ。

それから「DHEAS」。これは、脳の機能を強化する若返りのホルモンと言われています。こういう3つのホルモンが、アンチエージングに非常に働いてるということですね。

じゃあ、活性酸素というのは何かというと、細胞の中に、ミトコンドリアという物質があって、それが酸素の酸素を使った残りの燃えカスが、いわゆる活性酸素です。

活性酸素があると、臓器が萎縮したり、動脈硬化、癌、こういうものが人間の体の中に発生する。(これが)非常に悪玉の要素になるんですね。その他、添加物の多い食品をたくさん摂ると、活性酸素が発生する。

食べ物の中で、抗酸化物質「フィトケミカル」というのですが、抗酸化物質が体内に多いほど、いわゆる酸化を防ぐので、老化を防ぐことができるということですね。

高酸化力のある食べ物、フィトケミカルという植物化学物質がありまして、これは野菜なんかに非常に多いですね。果物にもたくさん含まれている。「フィトケミカル」というのは野菜とか果物に、動物の肉なんかにもあるんですけども例えば鶏肉なんかですね、非常に多い。

でも、牛肉なんかには、その「フィトケミカル」というのは非常に少ない。で、こういうものを、抗酸化物質をたくさん摂ると老化を防ぐことができるということなんですね。

だから、老化を遅らせるには、活性酸素による体内の酸化を少なくし、「インスリン」、「アディポネクチン」、「DHEAS」の3つのホルモンの維持が、非常に重要になってくるということなんですね。いわゆる生活の自立、日々の自己鍛錬、生涯現役の気力と体力、こういうものが精神的には、非常に自立するということです。

「インスリン」(インシュリン)ですね。これは、皆さんご存じのように、血糖値を下げさせるホルモンです。で、100歳以上の人には糖尿病がいないというのは、糖尿病ではないということですね。これは、「インスリン」の出が非常によろしいということをいいたいんですね。で、糖尿病っていうのは、「インスリン」の分泌がされないか、または「インスリン」の利きの悪い状態が、いわゆる糖尿病になるので、「インスリン」の働きを良くするためにはどうしればいいかというと、やっぱり毎日の運動。それから、いわゆる食事ですね。あまり血糖値を上げないようにする、というのが必要になるんですね。

だから、毎日暴飲暴食したり甘いものを食べたりしないようにですね。「インスリン」の働きを良くするためには、毎日の運動が必要になる。で、朝食には粘りのある食品ですね。例えば、納豆とかオクラとか、ああいう粘々したものをたくさん食べると、血糖値の上昇が抑えられて、「インスリン」の働きが良くなります。

良く言うんですが、最近は朝よりも夜だと、寝る前に納豆を摂った方が良いというのが最近の話なんですね。ま、いずれにしても、納豆を食べるというのが、非常にいい。

それから、「アディポネクチン」も活性酸素の働きを防ぐものなんですけども、これはあの良く知られているのが、動脈に働きかけて心筋梗塞とか脳卒中を防ぐ。これが「アディポネクチン」である。

筋肉や肝臓に働きかけて、これは「アディポネクチン」だけでも糖尿病を防ぐことができるんですね。で、これは脂肪細胞から出るんですね。

じゃあこれは、運動するって腹出てるから脂肪細胞いっぱいあるとか、「アディポネクチン」が出てるんじゃないかというとそうじゃないんですね。肥満するとですね、脂肪細胞が大型になっちゃうんですよ。そうすると、「アディポネクチン」の分泌が非常に悪くなるです。小型の脂肪細胞からでるホルモンが「アディポネクチン」である。

ですから、これもやっぱり、「アディポネクチン」をうまく活かすにはどうしたら良いかというと、やっぱり運動、規則正しい生活ですね。これがやっぱり必要。だから毎日、20分でも30分でも歩くっていう習慣があるとですね、「アディポネクチン」とか「インスリン」の出が非常に良くなるんですね。

で、そういう運動しないでですね、夜遅くまで酒飲んで、飲んだ後ラーメンなんか食べて腹いっぱいになったりして寝る。そうすると「アディポネクチン」なんかの出が悪くなるし、また、インスリンの出も悪くなって、身体の中に活性酸素が溜まってしまうということになるんですね。

規則正しい運動をすることは、非常に重要であると思います。この「DHEAS」を増やすことはアンチエージングとして、若返りホルモンや脳の神経細胞を増やすことに繋がります。

これは20歳でピーク、90歳で無くなると言われていますが、90歳、100歳になっても若々しく、三浦雄一郎さんのお父さんみたいにスキーをやられている方もいます。毎日の規則正しい生活で「DHEAS」を減らさないことが大事ですね。

先ほど言いましたように、「インスリン」・「アディポネクチン」・「DHEAS」などはアンチエージングの鍵を握っています。

最近は「AGEs」(advanced glycation end products:終末糖化合物)というのがでてきて、これは「グルコース(ブドウ糖)」などの還元糖が蛋白質の「アミノ基」と非酵素的に反応して生成され、特有な蛍光を持つ黄褐色の物質で、活性酸素の産生を亢進させて酸化ストレスを産出させるものです。

例えば、パンの焦げた茶色いところは、あまり良くないですね。「AGEs」には、生体内で生じる「内因性AGEs」と食物に含まれ体内に吸収される「外因性AGEs」があります。

「内因性AGEs」は、「グルコース」が半減期の短い蛋白質や資質や核酸と反応して生成され、「外因性AGEs」は、食物を加熱すると、急速かつ多量に生成されます。だから、焦げなどをつけてはいけないと言うことです。

また、食物に含まれる栄養素にも影響します。「AGEs」を少なくすると血糖値も下がるということです。

では、老化を遅くするにはどうしたらいいのか?ということです。

これには先ほども言いましたが、バランスよく食事をして規則正しい運動を毎日行なう。そして気力ですね!やる気を起こすことが重要です。

「フィトケミカル(植物科学物質)」とは、活性酸素を除去する野菜や果物に含まれている抗酸化物質のことです。「ポリフェノール(赤ワイン・ブドウ)」、「カテキン(緑茶)」、「βブルカン(きのこ)」、「βカロテン(緑黄色野菜)」などを食べると活性酸素を除去することができます。

納豆の効用として、粘りのある食品は血糖値を急上昇させない。ということは、「インスリン」の働きを良くする作用があります。「ナットウキナーゼ」は、血栓予防、「イソフラボン(大豆)」は、更年期障害の予防、骨の老化予防、活性酸素の除去。だから、納豆は身体にいいようです。

他の抗酸化食品として、ブロッコリーは200種以上の「フィトケミカル」、「唐辛子(カプサイシン)」は、脂肪を燃焼。「生姜(ジンゲロール)」は、脂肪細胞を小さく、「アディポネクチン」分泌促進、「カレー(クルクミン)」は、アルツハイマーの予防、「黒ゴマ(セサミン・セサミノール)」は、多くの「フィトケミカル」を含みます。

では、動物では駄目なのか?動物では「鮭(アスタキチンサン)」は、」認知症予防、「EpA(動脈硬化予防)」、「鶏肉(カルノシン」)は、筋肉疲労、「唾液(ペルオキシダーゼ)」は、活性酸素の除去を行います。

ただ「フィトケミカル」を摂っていればいいわけではなく、やはり、運動をしないといけません。

1週間に2000kcal消費する運動を行なっている人の寿命は、長い。これは、日本体育協会からも言われています。

1日では300kcal消費することが必要です。目安としてウォーキング90分(約1万歩)、ジョギング40分、サイクリング80分。よく1日1万歩といいますが、ここからきています。

これは筋肉加齢による筋断面積の低下のグラフで、筋断面積の低下は筋肉量が少ないということになります。

人間の身体の中で大腿四頭筋が一番落ちてしまいます。

つづいて、腹直筋、上腕三頭筋という伸筋群が多く、屈筋群の大腿二頭筋、広背筋、上腕二頭筋は比較的保たれています。

高齢者に筋肉トレーニングが行なわれていますが、転倒防止、身体を活性化させることを目的としています。

基礎代謝は、生きていくための最低のエネルギーです。この基礎代謝は、若い頃はエネルギーを消費するので食べてもあまり太りません。30・40代になるとエネルギーが中々燃焼しないので、太りやすくなります。基礎代謝は、筋肉の中に30%入っているので、筋肉量を増やすことで基礎代謝もある程度増えます。そのため、高齢者には、特に大腿四頭筋のトレーニングが必要です。

大腿四頭筋の筋力トレーニングの効果には①転倒予防②基礎代謝の向上③膝痛(変形性膝関節症)の予防があります。

最後に、今日お話した脆弱性骨折、骨粗鬆症にならないためには、「自分の身体は自分で守ろう!」ということであり、プラス思考で物事を前向きに考え、自分の身体は自分で守る気力を持って日常的に運動しながら、環境の変化やストレスに負けない体力を作ることが大切です。アンチエージングにもなるし、骨粗鬆症の予防になります。

またこれからは、日整会長がおっしゃった通り、整形外科の先生と柔道整復師の先生が仲良く共に勉強しながら患者さんの治療にあたることが大切だと思います。特に、若い先生方は運動器学会というのがありますので、そこに出席して運動セラピストになってもらいたいと思います。

そうすると、いわゆる診療所で働くとリハビリの点数がとれます。整形の先生と柔道整復師の先生方が一緒に働くというのが、私の切なる願いです。

ご清聴ありがとうございました。