2-1 柔整リハビリテーション研究事業

生 年 月 日 昭和42年4月4日生
開業年月日 平成13年6月21日
開 業 場 所 江別市4条7丁目5-1
卒業年月日 平成元年3月卒
出 身 校 北海道柔道整復専門学校

大森  勲
(札幌ブロック)

共同発表者:萩原正和、加藤 隆、土屋 淳、小山哲司、近野忠聖、西家洋昭

 

<<はじめに>>

私ども柔道整復師は、養成課程において医療系専門職として必要とされる医学的知識を中心に広く保健・医療・福祉に関わるカリキュラムを履修している。そのことは、国家資格取得後の進路において柔道整復施術所に限らず、病院・クリニックなどのリハビリテーションスタッフや介護施設などの機能訓練指導員として配属されている就業状態からも確認できる。

しかし、これらの知識や経験を持ち合わせているにも関わらず、整骨院・接骨院での業務では、十分に能力を出し切れていない現状があることを否定できない。
そもそも、柔道整復師はその取得した知識や経験で、保健・医療・福祉にどのような関わりを持つことができるのか、整骨院・接骨院を通して地域のためにどのような役割を担うことができるのかを考察したので述べたい。

<<方 法>>

実際に整骨院・接骨院を利用して地域住民に対し評価および相談支援を行った。なお、目的を明確にするために、柔道整復施術とは区別して柔整リハビリテーション研究事業として行った。

 

【柔整リハビリテーション研究事業概要】

目  的 整骨院・接骨院で実施する柔整リハビリテーションが地域住民(日常生活圏域)へ与える影響を確認する
対  象 介護保険第1号被保険者及び対象者とするのが相当と思われる者
実施場所 介護予防・機能訓練指導員認定柔道整復師として日本柔道整復師会に登録している者及び北海道柔道整復師会会長が認めた者が開設する整骨院・接骨院
実施期間 平成24年1月23日〜3月19日までの8週間
柔整リハ 1.主観的評価 
 ①JKOM(日本版変形性膝関節症患者機能評価表)
 ②JLEQ(疾患特定・患者立脚型慢性腰痛症患者機能評価尺度)
 ③転倒不安感尺度
2.客観的評価
 ①障害高齢者の日常生活自立度
 ②認知症高齢者の日常生活自立度
3.機能訓練指導等
 ①椅子立ち座り訓練(CS-30応用訓練)
 ②介護予防の相談及び指導
その他 当研究事業について道内各地の地域包括支援センターへ案内文送付により協力依頼

<<結 果>>

【柔整リハビリテーション研究事業集計結果】

ブロック名 施術所数
/箇所
件数/件
(平均)
備  考
札 幌 167 835(5.00) 対象者総数:2,076名
最高年齢:明治44年生まれ(100歳)
性別:男性693名・女性1,383名
後期高齢者:1,223名(58.9%)
要介護認定者:318名(15.3%)
要介護認定非該当者:1,489名(71.7%)
継続者:1,765名(85%)
日常生活非自立者
障害高齢者:603名(29.0%)
認知症高齢者:250名(12.0%)
※実施最高件数:30件/1名
※非認定柔道整復師:1名
※研修員:1名
小 樽 19 159(8.37)
函 館 45 159(3.53)
日 胆 34 207(6.09)
岩見沢 9 26(2.89)
滝 川 12 40(3.33)
十 勝 30 208(6.93)
釧 路 22 148(6.73)
北 見 16 102(6.38)
旭 川 37 172(4.65)
名 寄 10 20(2.00)
合 計 401 2,076(5.18)

 

実施行政区:80市区町村

札幌市中央区・札幌市東区・札幌市西区・札幌市南区・札幌市北区・札幌市白石区・札幌市手稲区・札幌市豊平区・札幌市厚別区・札幌市清田区・千歳市・江別市・北広島市・恵庭市・石狩市・小樽市・岩内町・ニセコ町・蘭越町・函館市・七飯町・八雲町・北斗市・森町・乙部町・木古内町・せたな町・室蘭市・苫小牧市・伊達市・登別市・日高町・浦河町・白老町・新ひだか町・えりも町・平取町・岩見沢市・美唄市・栗山町・南幌町・浦臼町・滝川市・芦別市・留萌市・深川市・赤平市・沼田町・羽幌町・帯広市・音更町・芽室町・幕別町・中札内村・足寄町・上士幌町・釧路市・根室市・弟子屈町・別海町・中標津町・羅臼町・北見市・紋別市・網走市・美幌町・佐呂間町・旭川市・富良野市・美瑛町・鷹栖町・東鷹栖町・上富良野町・当麻町・上川町・稚内市・名寄市・上川町・下川町・士別町

 

<<考 察>>

8週間の限定的な短い期間でありながらも2,076名の実績を得られたことから、多くの地域住民と係わることができたと考えられる。
また、これは主観的評価に厚生労働省介護予防マニュアルに記載されているJKOM・JLEQ・転倒不安感尺度を用い、客観的評価には介護保険の要介護認定調査や主治医の意見書でも採用されている障害高齢者の日常生活自立度と認知症高齢者の日常生活自立度を用いたことにより、保健・医療・福祉関係者における共通の言語と認識で考察することができたと言える。
このことは柔道整復施術ではなく新たな関わり方の可能性を導くものであったと考えられる。

<<まとめ>>

柔整リハビリテーション研究事業は、北海道柔道整復師会会員の知識と経験を基に良好な成果を残し終了した。今後ますます充実が求められる地域包括ケアシステムで、私ども会員の整骨院・接骨院が柔道整復施術所としてのほか医療・介護の対応機関として地域住民と関わることが地域福祉の向上に寄与することもわかった。
この研究事業はマスメディアで取り上げられたこともあり、新聞購読者より多くの問い合わせをいただいた。また、ご案内をさせていただきました道内の地域包括支援センター関係者様からも沢山のご意見やお問い合わせをいただいたことから、社会の関心の高さも伺えた。5人に1人が高齢者である超高齢社会に、運動器疾患が要介護状態となるリスクの高いことを踏まえ、私どもが担うべき役割に積極的に介入することが地域住民のニーズであると感じられた。
二次予防対象者の把握事業をはじめ、介護予防事業などに積極的に関わっていくこと、地域包括支援センター、医療機関、福祉施設などの関係機関との連携強化を図ることが今後の課題であると考えられた。

<<参考文献>>

  1. 中原和美:理学療法科学 22(2);225-228,2007
    最大下肢伸展筋力および生活機能と30秒間椅子立ち上がりテストの関連性
  2. 増田幸泰ら:理学療法科学 19(2);69-73,2004
    脳卒中片麻痺者における30秒間椅子立ち上がりテストと歩行能力の関係