ベッド型マッサージ器の一考察  篠木 由美子(滝川ブロック)

生 年 月 日 昭和38年7月5日
開業年月日 平成7年12月6日
開 業 場 所 雨竜郡沼田町南1条4丁目7–105
卒業年月日 昭和59年3月卒
出 身 校 東北柔道専門学校
shinoki_photo
篠木 由美子
(滝川ブロック)

<<はじめに>>

柔道整復師が日々の施術を行う上で治療器具は欠かせません。主力となる電気治療器は様々ですが、補足としてベッド型マッサージ器を導入されている整骨院は多々あると思います。当院でも同様で平成13年にオートヘルサーDZ-2000を導入し、施術時に症状や患者様の要望に合わせて使用した結果をご報告します。オートヘルサーとはローラーにかかる体重を利用して頭部から足部まで続的にまたは局所的に刺激をほどこし、マッサージ効果を得ることを目的としたベッド型マッサージ器です。特徴としては、年齢、柔軟性、症状の度合いに応じ、頭部から足部の間を往復移動するヒータを搭載した台車があり、弱圧、中圧、強圧、遠心、求心、さすり、押圧マッサージ、モータの回転により振動するバイブレーター、昇降機能によりバイプレーターローラーが上下動するストレッチなど複数部位同時マッサージ、多様なプログラム、インチング動作、また、開始とともにスピーカーから「1 /fゆらぎ」の成分を多く取り入れたアイソトニックサウンドを流すことにより心身を安定させマッサージによる治療効果を高めることができます。さらに当院ではリラックス効果を高めるためにアロマオイルを使用しています。

<<方 法>>

適当な部位でフィットするように身長を設定し、様々な症状に対応できるため100種類の治療パターンを登録することができますが、当院ではP 0 〜P 9 までの標準に記憶されているプログラムで10分間を使用し、年齢、急性期、慢性期、対象部位、使用頻度に応じてプログラムパターンなどを決定し、オートヘルサー導入から過去10年に渡り使用した患者様3,844人を対象に検証しました。
年齢は10歳〜87歳で、男女の比率は男性3 割に対して女性は7 割を占めています。
急性期(腰部捻挫)で使用した場合、施術5 日〜10日位で高齢者でも使用できる弱圧マッサージP 0 、全身低圧マッサージP 1 でスタートします。初めて使用する場合、インチング動作が始動し一度停止した時に、疼痛を訴えた際には直ちに中止します。疼痛や違和感の訴えがなければ終了まで行い、次回来院時に、必ず前回使用した後の状態を確認した上でメニューを選び、全身中圧マッサージP 2 、または全身強圧マッサージP 3 と徐々にアップします。急性期(頸部捻挫)ではあまり使用せず牽引治療の方が重要に思えますが、症状が改善され患者様が希望した場合は使用します。
慢性期(頸部)で使用した場合、メニューは肩部重点弱圧マッサージP 5 、または肩部重点強圧マッサージP6 を使用し、さらに要望があれば全身中圧マッサージP2 、または全身強圧マッサージP 3 と変更していきます。慢性期(腰部)で使用した場合、全身中圧マッサージP 2 、全身強圧マッサージP 3 、さらに全身最強圧マッサージP 4 を使用します。
体型では、痩せている場合は強弱アジャストで調整をし、バスタオルなどでローラーが当たる部分を保護します。また、高齢者など体型に変形がある場合は、通常はフラットで使用しますが、頭部に円座、膝窩にバスタオルを入れ仰臥位が苦痛にならないよう調整をします。

<<結 果>>

◎10歳女児の場合(身長138㎝)

指関節捻挫で来院。施術後、バレーボールで前傾姿勢が多く頸部から背部、下肢がだるいと訴えたため、姿勢保持やストレッチをアドバイスして全身低圧マッサージP 1 でスタート、5 回使用。その後、姿勢を意識するようになり、バレーボールの試合前後にも使用しました。

◎34歳女性の場合(身長152㎝)

肩関節捻挫で来院。産後から下肢のむくみがひどく靴が履けないと訴えたため、下肢のリンパマッサージをした後、脚部重点マッサージP 9 でスタート、10回使用し徐々にむくみが減少し、排尿回数も増え、体重の減少もありました。

◎28歳男性の場合(身長172㎝)

睡眠不足で体調が優れなかった時に職場の保健師に当院に行くよう言われたと来院。初診時所見し、全身低圧マッサージP 1 を使用、翌日「もっと刺激がほしい」と言われ全身強圧マッサージP 3 、さらに全身最強圧マッサージP 4 とパターンを変えて連続使用し、終わるころにはいびきをかいてました。それから何度か使用し不眠解消の傾向がみられました。

◎47歳男性の場合(身長168㎝)

腰部捻挫で来院。施術5 日に全身弱圧マッサージP 1をスタート、3 日後全身中圧マッサージP 2 、さらにその3 日後、全身強圧マッサージP 3 を使用した翌日、「実は以前より腎臓に石があり、今朝トイレの際、石が出たけれど何か関係があるか?」と聞かれ返答に困りましたが、現在も来院した時にはその話で盛り上がります。

◎72歳女性の場合(身長156㎝)

腰部捻挫で来院。施術3 日に全身弱圧マッサージP 1をスタート、5 日間使用し経過良好のため施術を終了しようとしたところ、実は重度の便秘症で投薬治療をしているがいつもと違う感じで便意があったと言われ、翌日からオートヘルサーだけを15回使用した結果、1 週間〜10日に一度の便意が、3 日に1 度、2 日に1 度と効果があり、ぽっこりお腹も解消されとても喜ばれました。

◎87歳女性の場合(身長145㎝)

7年前に腰部捻挫で来院。施術8 日、ほかの患者様がオートヘルサーを使用しているところを見て「自分もやりたい」と言われましたが、高齢で前傾姿勢でもあるため一度断りました。翌日も再度希望されたので、オートヘルサーを使用、強弱アジャストで調整、頭部に円座、膝窩にバスタオルを使用し、弱圧マッサージP 0 でスタートしたところ、インチング動作に対して疼痛もなく使用できました。翌日オートヘルサー使用による不都合は無かったか確認したところ良好だったと上機嫌でした。
それから数年に渡り使用することで膝窩のバスタオルを外し、弱圧マッサージP 0 を2 回使用する時もありました。一時期、転倒による腰部捻挫で1 年以上使用を中止した時もありましたが、久しぶりに使用することができたので大変喜んでいました。7 年前は側臥位でしか就寝出来なかったが、現在は仰臥位可能になったそうです。

<<考察>> 

当初は施術の補足として導入し、使用することで症状改善やリラックス効果につながればと思っていたことが、長期に渡り使用した患者様の検証により、当初の目的とは違った効果が現れていたことに気づき、視野を広げてみたところ便秘、冷え性、下肢のむくみ、不眠改善、特に便秘に関しては即効性もあり、男女問わず改善につながりました。また、オートヘルサーを使用したことで乗り物酔いの症状や、閉所恐怖症の確認を取らずにカバーをして使用したことにより不快感を与えてしまいました。

<<まとめ>>

今回の研究論文は当院での結果であり、使用法について議論される先生方もあると思います。私達が日々の施術を行う上で第一の目的は患者様が治癒することに他なりませんが、その過程に置いても患者様の要望に答え、心身ともに症状の改善を求められているのではないかと思います。そのためにも患者様とのインフォームドコンセントを徹底し、信頼関係を失わないように努力したいと思います。