生 年 月 日
開業年月日
開 業 場 所
卒業年月日
出 身 校 

昭和35年6月16日
平成11年9月16日
札幌市北区来た33条西12丁目
平成4年3月
北海道柔道整復専門学校

【本人談】 


筒井寛幸
(札幌ブロック)

<<はじめに>>

 外傷性肩関節脱臼は全脱臼の約50%を占めると言われ、そのうち97〜98%は前方脱臼であり、さらにその殆どが烏口下脱臼であると言われています。

その整復方法については、Kocher法・Hippocrates法・Stimson法他多くの整復方法が先人から伝えられ、またその他にも諸先生により色々な手技が報告されています。

 今回、Milch法を原型とすると思われる手技で、整復経験の少ない術者でも比較的容易に整復できるのではないかと思われる方法を経験したので弱冠の考察を加えてここに報告し、諸先生の御指導を仰ぎたいと思います。

<<整復方法=右肩関節前方脱臼として>>

 患者を背臥位にし、リラックスさせます。術者は患側に位置し左手で患者の患側母指を頭側から把握し重力に抗する程度の末梢牽引を加え、右手は上腕を保持し上腕骨全体を頭側に圧迫するように力を加えます。そして前腕中間位のままで患肢を前方に挙上させます。途中、疼痛がある場合は少し戻し疼痛か治まってから更に挙上します。90度位まで挙上すると上腕骨小結節部が肩甲骨烏口突起にはじかれる形で肩関節は外転し、外旋位となります。さらに外転・外旋位のまま120度から130度くらいまで挙上すると骨頭が関節窩に滑り落ちて整復が完了されます。

以下に症例を記します。


【症例 1】
患 者

39歳 男性 会社員

既往歴

特記すべき事なし

原 因

午前2時頃に酔って帰宅した際、自宅前で氷に足を滑らせ転倒し受傷した。

初 検

受傷日の午後12時頃に来院した。
 来院時は、左肘関節軽度屈曲位で上腕骨は軽度の外転位をとっており、三角筋部の陥凹及び烏口突起下の骨頭を触知し、左肩関節前方脱臼を確認した。
 一旦はヒポクラテス法で整復を試みたが、整復困難によりゼロポジション整復法に変更し直ちに整復された。


【症例 2】
患 者

17歳 男性  高校生

既往歴

特記すべき事なし

原 因

午前2時頃に酔って帰宅した際、自宅前で氷に足を滑らせ転倒し受傷した。

初 検

受傷日の午後12時頃に来院した。
 来院時は、左肘関節軽度屈曲位で上腕骨は軽度の外転位をとっており、三角筋部の陥凹及び烏口突起下の骨頭を触知し、左肩関節前方脱臼を確認した。
 一旦はヒポクラテス法で整復を試みたが、整復困難によりゼロポジション整復法に変更し直ちに整復された。



<<考 察>>

 まず、ヒポクラテス法で整復できなかった原因を考えると、整復技術の未熟さ(とくに2例目の整復時は末梢牽引時の外転位が不足していたと思われる)は当然のことながら、肩関節周囲筋の緊張が強かったためと思われます。

 また、ゼロポジション整復法で整復できたのは、逆に肩関節周囲筋の緊張が上腕骨骨頭を烏口突起下に強固に固定していたために、ゼロポジション位において肩甲骨関節窩前縁部を支点として上腕骨骨頭に槓桿作用が効率的に働き、更には棘上筋・棘下筋の牽引力が、骨頭が関節窩に復する補助となったのではないかと考えます。

 また、私自身の感覚としても本法はヒポクラテス法より明らかに患者の疼痛が少なく、整復音(感覚)も柔らかいと感じました。

<<まとめ>>

 脱臼の整復は、無言で柔道整復師の業務内容を他者に伝える手技であると思います。近年、SSHボランティアの活動が盛んになって来ている中で、整骨院・接骨院に骨折、脱臼の患者様が来院する機会が減っているのとは逆に、競技の現場で外傷に出会う場面が増えてくるのではないかと思われます。そのような環境の中、もし現場で肩関節脱臼に初めて遭遇したり、他の方法で整復困難だったりした時に、本法であれば骨折などの合併症がない限りは比較的容易に且つ安全に整復できるのではないかと考えます。

<<参考文献>>

 橋本 淳・信原克哉: 肩診療マニュアル 医歯薬出版(株)
 伊藤博元: 肩の痛み 南江堂
 肩症例検討会: 症例から学ぶ肩疾患 金原出版(株)
 内田淳正・加藤 公: ビジュアル基本手技 骨折・脱臼・捻挫 羊土社
 全国柔道整復学校協会: 柔道整復学(理論編・実技編)南江堂









 

生 年 月 日
開業年月日
開 業 場 所
卒業年月日
出 身 校 

昭和37年1月30日
平成元年6月
根室市弥生町1丁目62番
昭和56年3月
東北柔道整復専門学校

【本人談】 


柳澤泰貴
(釧路ブロック)

<<はじめに>>

 この整復法は、60代男性の症例がきっかけで行うようになりました。この時の症状が激痛のため、患肢を動かすことが出来ず、背臥位になることも困難な状態であった。その為、コッヘル法や踵骨法などの整復法が困難と判断し、この前腕を使った整復法が適していると思い試みたところ、無痛に近く容易に整復されたため、これ以後追試を行いました。その結果、肩関節前方脱臼の他の整復法の臨床経験より、症例数は非常に少ないのですが、前腕を使った整復法にて良好な結果が得られましたので、ご報告したいと思います。

<<整復前に>>

 第一に、整復前に出来るだけ患者をリラックスさせるように努めます。患者を一番疼痛の少ない肢位で安静にさせ、同時に静にゆっくりとした呼吸をさせて、出来るだけリラックスさせます。特に冬期は寒さのため筋緊張が強いことが多いので、暖かい部屋での安静とゆっくりとした呼吸をさせて落ち着かせ、リラックスさせることは、筋緊張の緩和に有効であると思います。

<<整復法>>

 座位で行います。術者は患側の前側方に立ち、まず患者の姿勢を正し患側肘関節を屈曲し、上腕部を前方に屈曲やや外旋させ、術者は前腕下端部を前方より患者の腋窩に入れ、上方へ骨頭を引きあげ保持し、同時にもう片方の手で、患肢肘部付近を把握して、下方へ牽引し内転させ整復します。整復時は、強い力で一気に整復するのではなく、二次的損傷を防ぐために、疼痛や筋緊張増強などの抵抗を確認しつつ、ゆっくり徐々に力を入れていき整復するようにしています。


 

【症例1 年齢27才女性】

現 症:

右肩関節前方脱臼

原 因:

バレーボールの練習中に、スパイクをうった際に受傷する。

既往歴:

脱臼歴はないが、数年前より、バレーボール中特にスパイクをうった際の疼痛と不安定感・脱力感があり、二年前に整形外科を受診したところ、動揺性肩関節、いわゆる「ゆるい肩」と診断される。

症 状:

肩関節前方脱臼固有症状著明、右上肢機能不全

特 徴:

自発性疼痛と筋緊張非常に強い

整 復:

前腕を使った整復法にて整復を試みる。無痛に近く、整復に要する時間が極めて短く、整復される。

【症例2 年齢22才男性】

現 症:

左肩関節前方脱臼

原 因:

路上歩行中、足を滑らせ転倒し、手をついた際に受傷する。

既往歴:

過去三回脱臼歴あり

症 状:

肩関節前方脱臼固有症状著明、左上肢機能不全

整 復:

前腕を使った整復法にて整復を試みる。無痛に近く、比較的容易に整復される。

<<結 果>>

 過去3年間(平成15年1月〜平成18年2月迄)で、肩関節前方脱臼は、当院症例数3例、他整骨院症例数7例の全症例数10例のうち、「前腕を使った整復法で良好に整復できた」が9例、「前腕を使った整復法で行うも整復できず、他の整復法で整復した」が1例の結果が得られました。

<<考 察>>

 整復できなかった症例を考慮すると、この整復法は、最初の整復操作がポイントであると思われます。個々の症例により角度の調整が必要ではありますが、肘関節を屈曲させることで上腕二頭筋や烏口腕筋などの緊張が弛緩され、上腕を前方へ屈曲し外旋させることで内旋転位が除去され骨頭が関節窩へ近づきます。先にこの状態(肢位)にさせてから、そのあとに、長軸上の整復操作を行うことで、受傷時の脱臼経路を逆に辿ることになり、疼痛が非常に少なくスムーズな整復が可能になるのではないかと推測されます。

<<まとめ>>

 この整復方法は、患者を座位のまま術者1人で整復でき、整復操作しやすく方法が容易であること、整復時の疼痛が非常に少ないことなどの利点があります。問題点は、今のところ良好な結果が得られていますが、症例数が少ないことです。

 今後症例を重ね、この整復方法の利点と問題点を研究し追求していきたいと思っています。

<<参考文献>>
 ○ 神中整形外科学(南山堂)
 ○ 整形形成外科診療(六法出版)
 ○ 整骨学沛緕編(南江堂)
 ○ 肩の痛み(医歯薬出版株式会社)